阪神・淡路大震災の被災地では、人間よりも経済優先の復興が進められています。住民の意見や希望は無視され、「個人の再建は自助努力で」という政策のもと、公的援助はほとんど無きに等しく、被災した人々の多くは健康や生活基盤をおびやかされて、立ち直れないまま、月日ばかりがたっています。
自分の街に戻りたい、自分たちの街は自分たちでつくりたい。被災者の思いは人として当然です。しかし、その思いを人権としてみとめ、保護する「居住の権利(居住権)」のことを知る人は、日本ではまだ多くはありません。
「居住権」の大切な基本は、単に家を建ててもらうことではなく、住民が自分たちの意志で、家や地域社会をつくっていくこと。そして行政の役割は、住民の意志を尊重し、そのための支援をすること。これが、大切な人権のひとつとして、国際的にみとめられた「居住の権利」を守るということです。
たとえば、今、住んでいる所からの立ち退きを迫られたら、行きたくもない場所で住むことを強要されたら、この冊子を開いて言ってください。「私はここを出ていくことは望まない。私には居住の権利がある。だから私はここにいる」と。
古今東西、人々の生きる闘いは共通です。人間らしい暮らしをもとめて、今日も世界のどこかで闘っている人々がいます。権利は授けていただくものではありません。勝ち取るものなのです。
ご意見、ご感想をお寄せください。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
1996年9月29日 第1刷 / 10月31日 第2刷
/ 11月22日 第3刷
居住権冊子制作部 文 : たけしま さよ・渡辺 玲子 / 絵 : たけしまさよ / 編集・印刷協力 : 高森香都子
この「立ち退かなくても大丈夫。」冊子は、震災の翌年に、イスタンブール第2回人間居住会議NGOフォーラムに参加した「ザ・ボイスフロム神戸」のメンバーによって、阪神淡路大震災の被災地で制作されたものです。時制を示す表現などを一部修正してあります。また原本にはすべてふりがなが付いています。
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