#BlackLivesMatter に連帯し、人種主義の撤廃を求める声明
日本YWCAは、ミネアポリス市警察官によるジョージ・フロイドさんの殺害に対し、世界のYWCA運動の一員として、米国YWCA・世界YWCA をはじめとする各国YWCAの発信に連帯し、連邦、州および地方自治体で事件の 徹底的かつ透明性のある調査と処罰が行われることを求めます。#BlackLivesMatter運動に連帯し、社会からの構造的人種主義の排除を求めます。
私たちが住む日本の社会もまた、人種主義を保持・強化し続けています。「単一民族」という誤った認識、そして天皇制が根底にある、人間に「聖/卑」「優/劣」をつける価値観の中で、不可視化された人々の人権を無視し、あるいは明確にマイノリティの人権を抑圧・侵害し続けています。
人種主義は、日本において以下のような状況に現れています。
・コロナウイルス感染症が社会を襲う中で、外国人労働者が真っ先に仕事を失っていること、外国人留学生だけは学生支援金給付の可否を成績で線引きするという政府方針、コロナウイルスによる日本語学校や技能実習先の停止を含むさまざまな理由で非正規滞在状態に陥った外国人が社会的救済から置き去りにされる状況。
・外見上「日本人」に見えず白人とも違う人たちに対する警察による恣意的な職務質問・暴力。
・難民として日本にやってきた人たちへの非人道的な扱い。
・独立国として栄えた琉球王国が併合され、太平洋戦争末期には本土防衛の防波堤とされ、戦後は米国に引き渡され、日本に復帰後も米軍基地の70%が集中し、今また、選挙によって繰り返し表明された民意を無視する形で辺野古・高江の住民の健康や安全を脅かす新基地が建設されようとしている沖縄の状況。
・土地と独自の言語・文化による伝統的生活の場を奪われ続けたアイヌ民族の歴史。
・国連先住民族権利宣言後の 2008年まで「日本に先住民族はいない」と言い続けた日本政府のあり方。
・人権理事会や人種差別撤廃委員会をはじめとする国連人権期間が「世系による差別」として明示している、被差別部落の人々に向けられ続けてきた差別。
・かつて朝鮮半島をはじめアジア諸国に対して行った侵略と略奪、そこで女性たちに加えた残虐な性暴力、敗戦とその後75年を経た今も、その加害と歴史的責任に向き合う代わりに侵略戦争を美化し、あるいは事実を否定・歪曲し被害者を侮辱する言説。
・侵略戦争による祖国の分断という背景のもとで日本に幾世代にもわたって暮らしながら、参政権、民族教育への権利を含む人権を奪われ続ける在日コリアンの人々の立場、彼女・彼らに向けられる偏見と憎悪。
さらに、人種的・民族的マイノリティに属する女性たち、性的マイノリティの人々が直面している複合的差別に関しても、社会的な認識と取り組みが不足しています。
上記のような、自分たちの社会に内在する構造的不平等を意識せずに1日1日を送ることができている多くの「日本人」は、実際にはマイノリティの人々の人権を抑圧することで成り立っている社会構造の恩恵と特権を享受しています。その事実に向き合うことなく、人種主義に対して声をあげずにいることは、現状を是認することであり、「自分は善意である」と信じていたとしても、その不正義に加担することです。私たちには行動する責任があります。
私たちが#BlackLivesMatterに連帯するのは、これが外国で起きていることではないからです。NHKの番組による#BlackLivesMatter抗議運動の認識を欠いた描き方は、警察による殺人事件を無視し、同運動に対する偏見と否定的な見方を広めるものであることに加えて、この問題を外国のものと描いた点で誤っています。人種主義は、私たちが住む日本の社会を、幾世紀にわたって蝕んできた問題です。
日本YWCAは、「多世代・多文化で多様な背景を持つ人びとを尊重する社会」をビジョンに掲げています。2009年に「アジア・太平洋戦争の謝罪と未来に向けての決意表明文」で宣言しているとおり、かつて日本の帝国主義に基づく侵略と戦争を止めることができず、戦争協力を余儀なくされた反省に立ち、二度と同じ過ちを繰り返さないよう、平和を求めて声をあげ、また、「日韓ユース・カンファレンス」や「南京を考える旅」、「ひろしまを考える旅」など、アジア・太平洋地域のYWCAとの連携を重んじつつ学びと行動の場をつくるプログラムを継続してきました。各地域YWCAでも、さまざまな形で多文化共生をはぐくむ活動に力を注いでいます。
私たちは今後も、世界のYWCAの仲間たちとともに、人種主義に抗い、すべての人が尊重される社会のために行動し続けることを決意し、ここに表明します。
2020年6月22日
日本YWCA
声明(PDF)は日本YWCAのホームページでもお読みいただけます。
また、海外のYWCAが出している声明については、以下のページをご参照ください。