わたしたちの活動
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    私たちの平和憲法をまもろう

     2012年11月23〜25日に開催された第31回YWCA全国会員総会で、「改憲の動きを知り、アクションを起こそう!」と決まりました。神戸YWCAでもホームページやFacebookを通して、憲法をまもりたい思いを発信していきます。

     12月16日の衆院選は自民党の圧勝という結果に終わりました。私たちは平和憲法が変えられてしまうのではないか、という不安を訴えてきましたが、この選挙結果が出た今、不安はさらに大きくなってきています。

     皆さんは自民党の「日本国憲法改正草案」(2012年4月27日決定、以下「改憲案」)をご覧になったことがありますか?(日本YWCA機関紙12月号に、現行憲法と改憲案との比較表が掲載されています)

     神戸YWCA平和活動部でも、11月17日に憲法についての学習会をもち、この改憲案を現行憲法と比較しながら読みました。

     いまの憲法によってまもられている私たちの権利はどんなことなのか、もし憲法が改<悪>されると私たちの暮らしはどう変わるのか、具体的にわかりやすくお伝えしていきたいと思います。

    2012年12月16日
    神戸YWCA平和活動部

    ☆前文と第1章
    ☆第3章 国民の権利及び義務
    ☆憲法を尊重し、擁護するのは誰?
    ☆改憲24条に異議あり〜個人として尊重されて生きられない
    ☆第9条はシンプルでいい!!
    ☆第9章 緊急事態(改憲案98条、99条)
    ☆憲法改正の手続きは?


    前文と第1章

     憲法の前文には三つの大事な考え方がある、と習ったことがあります。「民主主義」と「国際平和主義」と「主権在民」です。現行憲法では、民主主義について「正当に選挙された国会における代表者を通じて……」とあり、その福利は国民が享受すると明記されています。国際平和主義については、日本だけでなく「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」と、先の戦争から学び取った平和への痛切な思いが表されています。主権在民のことは「ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」と、はっきり記されています。

     ところが、改憲案ではどうでしょうか?三権分立、世界の平和、国民主権という言葉はありますが、何よりも「国家」という言葉が目立つのです。「長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家」、「……家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する」、そして「良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するために、ここに、この憲法を制定する」とあり、憲法制定の目的も国家の継承のためと書かれています。

     第1章の天皇に関して、とても驚いたのは、改憲案に「天皇は、日本国の元首であり」とあることです。辞書で「元首」を調べると「国の首長」と書かれています。現行憲法の「象徴」が、なぜ首長に変えられるのでしょうか? 第1章では3条も新設されて「国旗は日章旗とし、国歌は君が代とする」「日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない」とあります。憲法に、国旗と国歌を記す必要はあるのでしょうか?

    (T.K.)


    第3章 国民の権利及び義務

     現行憲法の第12条では「国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。また、国民は、これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ」とあります。ところが、改憲案では前半部分は同じなのですが、後半が「自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない」と変えられています。

     第13条には、現行憲法では「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」とありますが、改憲案では「公共の福祉に反しない限り」が「公益及び公の秩序に反しない限り」に変わっています。

     第21条の「表現の自由」においてもやはり、公益及び公の秩序を害することは認められないとする文言が追加されているのです。このように、自民党案には「公益及び公の秩序」という言葉が多く出てきます。

     「公益及び公の秩序」とは何でしょうか? 公益や公の秩序に反しているかどうか、誰が判断するのでしょうか?

     例えば私たちが脱原発を訴えてデモをする時、デモは秩序を乱すと捉えられる怖れがあるかもしれません。私たち国民が自由に意見を述べることができない日が、来るかもしれないと不安になってきます。

    (T.K.)


    憲法を尊重し、擁護するのは誰?

     現行憲法第99条には「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」と明記されています。しかし、改憲案(第102条)では「全て国民は、この憲法を尊重しなければならない」とあり、まず憲法を尊重すべき者は国民だとされています。二番目に、公務員が憲法を擁護する義務を負うと。擁護すべき者の中に、天皇は入っていません。天皇は国の「元首」だから、憲法を擁護する必要がないのでしょうか?

     以前、伊藤真さん(法学館/伊藤塾 塾長)が講演で「憲法は国家権力を制限して、国民の人権を守るためにあり、国民に義務を負わせるのは法律である」と話されていました。さらに「国会議員が今の憲法を否定する新憲法を制定することは、憲法的に認められておらず、一種の政治的クーデターである」とも。

     私たち国民は今こそ、真剣に「憲法」のことを考えるべきです。

    (T.K.)


    改憲24条に異議あり〜個人として尊重されて生きられない

    「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位」?
     日本国憲法24条は婚姻について第1項では「両性の合意のみに基いて成立」、「夫婦が同等の権利を有する」など、第2項では婚姻及び家族に関する事項についての法律が、個人の尊厳と両性の本質平等に立脚して制定されなければならないと記されています。結婚、家族についても、改めて日本国憲法の原則である「基本的人権の尊重」を確認しているわけです。
    ところが、「改憲案」24条は第1項に「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は互いに助け合わなければならない。」が付け加えられています。

    「自然」は人によって違う
     社会で自然に生きていくというとき、結婚するか、家族を持つかどうかは人によって違うと思います。それを憲法で、これが自然と決められたら窮屈でしかたないし、その枠にはまらない人たちは嫌な思いをすることが多々あるはずです。例えば、シングルでいること、同性愛者、性同一性障害者が自然に生きる事は認められないだろうし、結婚しても子どもを持たない・持てないカップルへのプレッシャーはさらに高くなるでしょう。同性愛者の結婚も認められつつある今の世界の流れに完全に逆行しています。個人の尊厳に立脚するなら、個人が自然に幸せに生きる事を大切にするなら、ありえない考え方です。

    家庭に問題があっても守られるべき個人
     今、日本では家族、夫婦の問題が深刻です。家庭内暴力、児童虐待、育児放棄、老人虐待・・・。自民党はこれらの問題に対して、社会の基礎的単位として家族は助け合わなければならないと規定さえすればいいと思っているのではないでしょうか。家族の間で解決しろと言わんばかりです。DVの夫から逃げざるをえない妻に、児童虐待の親子に、こんな規定をあてはめてどんな未来が待っているでしょうか?夫婦、家族がうまくいかなかった場合にも、妻が、夫が、子どもが、あるいは老父母が個人として尊厳をもって生きていける社会にしようというのが憲法であるはずです。

    家族の問題として「扶養」が追加された意図は見え見え!
     改憲案第24条第2項に「扶養」という言葉が加えられています。社会福祉の貧しさの問題を家族の自助努力により解決しようという、従来からの自民党の意図が見え見えではないでしょうか。それなりに成功した芸人の親が生活保護を受けていたということに、鬼の首でもとったように非難をあびせる政治家、マスコミは、日本は生活保護を利用する資格のある人のうち実際に利用している人の割合が、主な先進国と比べて格段に低い(*)という事実を明らかにしません。
    *2010年 日本:約2割 ドイツ、フランス、イギリス、スウェーデン:5割〜9割
    (『生活保護「改革」ここが焦点だ』(あけび書房)(生活保護問題対策全国会議【編】より)

    違うことが許されない、失敗が許されない社会でいいのか
     こんな改憲24条を作った人たちには、自分と違う人たちのことが想像できないようです。違う人たちのことを知ろうともしないし、自分が何かのきっかけで「自然」からはずれてしまうことなど考えられない。経済的に失敗して子どもや親を扶養できなくなってしまうこともあるなど想像できないのでしょう。憲法は、恵まれない環境に生まれても個人として尊重される、人と違っても個人が幸せと思う生き方を追求することを保障するものでなければいけません。

    (K.H.)


    第9条はシンプルでいい!!

     私たちの日本国憲法は、憲法前文の崇高な理想と戦争放棄の第9条が一体になって、非暴力平和主義を掲げています。

     第2章 戦争の放棄と第9条の問題に進みます。

     さあ、あなたは、「今のままの戦争を放棄し戦力を持たないと決めた憲法」と、「軍隊(国防軍)をもち、戦争ができる国をめざす憲法」のどちらがいいと思われるでしょうか。

    改憲案では、第9条はすっかり変わってしまいます
     内閣総理大臣を最高指揮官とする『国防軍』を保持し、自衛のための戦争なら可能になります。自衛のための戦争の中には、今の憲法では禁じられている「集団的自衛権」を使って、アメリカのおこなう戦争に日本が参加できることになります。(いや、むしろ日本の自衛隊をアメリカ軍の傘下で自由に使いたいので、アメリカが日本に改憲を迫っているという見方があります。)

     もし、このような憲法が早くに成立していたら、日本のわかものは、朝鮮戦争にもベトナム戦争にも参戦しないではすまなかったでしょう。そして最近のアフガン攻撃、イラク攻撃にも後方ではなく参加したでしょう。もし、ここで、わたしたちがこの改憲を認めてしまったなら、これからアメリカが起こす「テロとの戦い」のいろんな場面でも、日本のわかものの血が流れるでしょう。

     今まで日本は「一国平和主義」で身勝手だともいわれてきましたが、果たしてそうなのでしょうか。私たちはそうは考えません。

     ここで少し細目に触れますが、今後どのような法律ができ、私たちをも縛ることになるのか、67年前に終わった戦争の体験者や、あの時代のことを学んだ人たちには、ある程度の想像ができるのです。

    *国防軍の任務の中に、「公の秩序を維持する」ことが書かれています。そして、「機密の保持」のための法律ができ、軍人その他の公務員がその職務の実施に伴う罪または国防軍の機密に関する罪を犯した場合の裁判を行うための・・・審判所が設けられます。
     戦争体験者たちには、こうなった場合のこれからの日本が心配でなりません。

    現行憲法は
    第2章 戦争の放棄
     として第9条1項で、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄」し、2項で「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は認めない。」という、シンプルなものです。

    「人間の安全保障」は時代のニーズ
     自民党草案のような憲法を今持つことは、時代のニーズに逆行していると思われます。なぜなら、67年前の敗戦から、私たちは多くを学びました。そして人類は世界戦争を二度も体験し、このままでは大変なことになることに気づき、「人間の安全保障」を選びました。日本もまた、平和憲法を礎に、最近は「人間の安全保障」を外交政策のひとつに掲げています。それなのに日本は古い「国家の安全保障」の枠組みと備えに戻ろうというのでしょうか。

    改憲を迫るのは誰で何故なのでしょう?

     アメリカは、戦後、今の憲法を私たちに与えてくれました。アメリカの歴史の中で、ほんのひと時だったかもしれませんが、「人間の良心」がこの憲法に結実したのではないでしょうか。ところが、アメリカは今(かなり前からですが)、この憲法を日本に変えさせ、アメリカのおこなう戦争に日本の自衛隊も集団的自衛権を行使し参戦できるようにしたい、と圧力をかけているようです。日本の中にも、アメリカの意向に従わなければ、という思いの人たちがいます。また、押し付け憲法ではなく自主憲法を持ちたいという思いを持つ人たちがいます。

    今までの憲法論議と
     自主憲法制定は自由民主党の党是です。今度の選挙でも、改憲を公約の一つに掲げています。今までも現行憲法を新憲法に変え、軍隊を持ちたいと願ってきました。しかしそれが実現できなかったのは、現行憲法が硬派の憲法なので、この憲法の精神を根っこから変えてしまうことは認めていないのです。今の改憲をクーデターとみる理由です。

     ですから、今回の改憲案では、現行憲法の文章を巧みに混ぜ合わせて全く違った憲法になってしまうことに気づかれないように(?)なっているなと思います。とりあえず、今回の改憲に成功すれば、第100条で改正を容易にするので、次回からの改憲は容易になってしまいます。

     今まで何度も自主憲法を制定したい人たちの動きを阻んできたのは、「戦争はもうこりごり」と思ったたくさんの人たちと「現行憲法の素晴らしさ」を知る人々の働きだと思います。でも、戦争を体験した人たちは年々少なくなっています。

     憲法前文は次のように始まります。
    「日本の私たちは、正しい方法で選ばれた国会議員を通じ、私たちと子孫のために、かたく心に決めました。すべての国々と平和に力を合わせ、その成果を手に入れよう、自由の恵みを、この国にくまなくいきわたらせよう、政府が引き起こす恐ろしい戦争に二度とさらされないようにしよう、と。私たちは、主権は人々のものだと高らかに宣言し、この憲法を定めます。」(「やさしいことばで日本国憲法」池田香代子訳・マガジンハウス)
    あなたもぜひ、今の憲法の素晴らしさに触れてみようと思ってくだされば嬉しいです。

    戦争を放棄した憲法第9条は、人類の希望の星です
     戦争から平和が生まれないことを、私たちは経験と学びから知っています。戦争によって失った人格や人間性を取り戻すことの困難さを想像してみてください。(戦地からの帰還兵たちが語っています)もし、戦場に行って命があったとしても、あなたをそんな目にはあわせたくありません。

     人々を戦争に駆り立てるためには、情報操作がつきものです。「国防や国際貢献のために、人道のために」という、戦争を始めたい人の側がつくった情報が一方的に流されれば、その時々の国民の多くは、間違った判断をしてしまいます。人間は弱いし、誰でも間違いを犯しやすいのです。ですから、あらかじめ憲法に「戦争を放棄すること、戦力を持たない」と書いて、歯止めがかけてあるのです。

     日本国憲法は、前文の崇高な理想と第9条が一つとなり、戦争を放棄し、戦力の不保持を決めました。しかし、改憲案では、前文の性格も第9条も、全く違ったものになっています。

    「緊急事態」に注目!!
    第9条の改正に関しては、改憲案の第98条、第99条に書かれている「緊急事態」も大きくかかわってきます。注視してくださいね。

     あらためて、自民党憲法草案に第9章として出てくる“緊急事態”について、これだけでも、また勉強の機会がもてればと思っています。

    (K.M.)


    第9章 緊急事態(改憲案98条、99条)

     自民党の提出した改憲案修正版には、「緊急事態」という章が新たに創設されています。

     これは、外国からの武力行使や内乱による「社会秩序の混乱」、地震等による「自然災害」等の緊急事態には、内閣総理大臣が緊急事態を宣言し、政令を定め、財政上の支出等の必要な処分を行い、地方自治体の長に必要な指示を行うというものです。つまり、内閣総理大臣が「緊急事態」を宣言すると、内閣総理大臣に法律制定、財政の支出等の処分、地方への指示等をするという非常に強い権限を与えるものです。

     緊急事態条項については、2011年3月11日に起きた東日本大震災および福島第1原発事故の発生に対する政府の対応の遅さに対する対策として、その必要性が主張されてもいます。

     しかし、一度立ち止まって考えてみてください。緊急事態条項を入れたところで、地震や津波は防げるでしょうか。原発の事故対応のまずさは憲法のせいでしょうか。緊急事態とは主に戦時や内乱への対応に必要な条項と考えられており、この条項を認めることはすなわち私たちが大切に守ってきた憲法第9条の改正に結びつく危険性の高いものです。新しいこの章の創設の狙いも9条の改正にあるのかもしれない、という視点からこの条項をみつめてみる必要があるのではないでしょうか。

    (H.M.)


    憲法改正の手続きは?

    憲法改正要件の緩和
    現行憲法では、憲法の改正は、衆議院・参議院それぞれの総議員数の3分の2以上の賛成で国会が議決するものとされています。しかし、改憲案修正版では、「3分の2の賛成」から「過半数の賛成」へと要件が緩和されています。

     過半数の賛成で国会の議決が通るということは、小選挙区制という選挙制度と相まって、多数の横暴がまかり通ってしまう状況を作りかねません。

    憲法改正手続について

     憲法改正の手続は次のようなものです。
    ①国会議員によって提出された憲法改正の原案は、②憲法審査会の審議を経て、③国会において発議と審議がなされた上で、④衆議院で100人以上、参議院で50人以上の同意を得た場合、⑤国民投票の実施により、賛成の投票の数が投票総数の2分の1を超えた場合には国民の承認があったものとなり、内閣総理大臣により憲法改正の公布のための手続きが進められることになります。

     憲法改正手続の整備は着々と進められています。まず、②の憲法審査会は2011年11月から始動しています。また、⑤の国民投票については、2007年5月に国民投票法が成立しています。このような中、自民党が改憲案修正版を提出したことだけではなく、例えば日本維新の会など改憲勢力が多極化している状態です。

    (H.M.)



    YWCA(ワイ・ダブリュー・シー・エー/Young Women's Christian Association)は、キリスト教を基盤に、世界中の女性が言語や文化の壁を越えて力を合わせ、女性の社会参画を進め、人権や健康や環境が守られる平和な世界を実現する国際NGOです。
    1855年英国で始まり、今では日本を含む125あまりの国と地域で、約2,500万人の女性たちが活動しています。