「上筒井から」Vol.9(Mar. 2001)

上筒井からの発行


 7年前、震災が起きた。が、私はその後10日で渡米し、神戸に帰ってきたのは約1年半後のことだった。震災の時の記憶のままいなくなって帰ってきたら、一見神戸はほとんど復活したように見えた。確かにまだ更地は多かったが、みんな震災前のように暮しているように見えた。

 震災後何もできなかったと言う気持ちが大きくあって、震災復興委員会のお手伝いをするようになってはや3年目。仕事に追われて思うように活動はできていないが、本当にいろんなことを教えてもらった3年だった。神戸に帰ってきて、復興したように見えたものは、見えるものだけだったこと。見えないところの復興はまだまだ終わっていない。それどころか、復興をできないままにほおっておかれてしまうかもしれない現状。この委員会に参加しなければわからなかった事、気付かなかった事がいっぱいある。

 神戸に住んでいる人々でさえも気付いていないことがまだまだ多くあると思うし、神戸に住んでいない人にとっては尚更のことだと思う。

 そんな神戸の終わっていないが終わったように見せる復興を、市民の手による完全な復興に変えたい。今の神戸の現状をもっといろんな人に知ってもらいたい。また、震災後7年もたって尚、私達を応援してくださっている皆様に現状を報告したい。そんな気持ちからこの「上筒井から」は生まれました。

 私も実際にできている活動は、この発行だけですが、これからも皆様に神戸の状況をお伝えする為に、「上筒井から」を発行していきます。皆様のご意見、ご感想お待ちしておりますので、お気軽にいつでもお便りください。

 移転によって会館は小さくなりますが、活動の規模や、私たちの思いは変わりません。思えば、私がはじめてYWCAに来たときには、現在の会館はなく、古い木造の2階建ての会館でした。そのなかで、会員の皆さんが楽しそうにいろいろな活動をされていたことを思い出します。

 新しい会館に移っても私達は楽しく、そして目的を果たす為に活動を続けられたら良いなぁと思っている今日この頃です。                          

(万)



 「上筒井から」というニュースレターのタイトルには私たちのこだわりがあります。

 震災、そして「神戸YWCA救援センター」の活動によって、これまで見えていなかった地域社会が見えてきました。一方地域からも神戸YWCAが見えてきたと思います。「上筒井から」第1号の表紙の下には「『上筒井』は神戸YWCAのある地名です。神戸の中にある小さな1点から見つめた神戸の姿をお伝えします」とあります。ここで展開される活動から見えることを発信していきたいと願ってニュースレターに「上筒井から」というタイトルをつけました。

 神戸YWCA50年の歴史を刻んだこの地を去らねばならないことは辛いことですが、幸いなことにそれほど遠くない二宮町に、新しい会館が与えられました。さらにうれしいことに、上筒井のすぐそばの坂口通にある元渡辺小児科の建物をご厚意によってお借りすることができ、分室として活用することになりました。ここは、震災後の6年間で培ってきた地域活動の拠点となります。分室では、高齢者・障害者への配食サービス「わいわいランチ」や野宿者支援活動「夜回り準備会」の他、福祉委員会が(これも震災後に)作ってきた「わいわいデイルーム(ミニ・デイサービス)」や子育て支援のための「ドロップインセンター」など、様々に活動を展開してきたいと思っています。大きな困難や絶望から希望は生まれる、という震災の時に感じたことを、今再び感じているところです。

 神戸YWCAは、2001年3月31日で上筒井の会館を閉じ、4月1日より二宮町に移りますが、ニュースレターは「上筒井から」のまま変わりません。「上筒井」は私たちの地域活動の出発点であるからです。 

                                
(真)


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