「上筒井から」Vol.3(Feb. 1999)

神戸「市営」空港は必要か?


 元旦の新聞に『神戸空港ニュース』の19号が折り込まれていた。いつものように結構づくめのものである。見るともなく開くと『神戸の歴史は神戸港によって培われた歴史』とある。その神戸港は度重なる埋め立てによって、港としての機能が損なわれてきていて、もし空港島ができたら大阪湾全体の死につながるというのに。新年早々腹立たしい思いで去年の夏の署名運動を振り返る。

 神戸YWCAが代表世話人として参加した、『神戸空港・住民投票の会』による「神戸空港建設の是非を問う住民投票条例の制定を求める直接請求署名」運動は、8月21日から9月20日までの1ヶ月実施され、35万余りの署名を集めた。“大事なことはみんなで決めよう”の合言葉で始めたこの署名活動は相当に厄介なものであった。地方自治法に則って、様々な『キマリ』の中で行われたのである。猛暑の中、面倒な手続きの上での35万である。前年の市長選での笹山氏の得票数は27万、それをはるかに上回る市民が空港は住民投票で決めるべきと意思表示をしたのである。

 空港について市民の意見を聞かれたことは一度もない。30年ほど前の神戸沖計画は種々の事情(神戸Yの反対運動も)で、当時の市長が反対の立場をとり、泉州沖の関西国際空港となった。90年になって市議会が建設推進を全会一致で決議、現在は議員の7割が推進派である。推進派は住民投票反対派と見事に一致している。

 阪神・淡路大震災直後の笹山市長の空港計画推進発言で、市民の疑問が噴出した感があるけれど、それ以前から、中田作成氏のように空港に対しての異議申立てを続けてきた方もあったのである。その延長線上に今回の住民投票運動があったと私は思っている。

 353,525の署名は、市の選管で307,797が有効とされた。投票条例制定の直接請求のための法定数の約13倍である。臨時市議会が開かれたが、意見として「投票条例は必要ない」を添付した市長のもと、まともな議論のほとんどないまま、条例案は強行採決によって否決された。そして「神戸空港の推進に関する決議」が採択された。数の暴力である。しかし今回の『否決』で、住民投票を求める運動が終わってしまったわけではない。今、新たな動きがある。運輸省と環境庁に対して、請願署名をすることになった。神戸『市営』空港に関して、市民の疑問が根強く、住民投票が実現するまで、神戸市が申請する空港島の埋め立てを認めないよう求めるものである。

 その上で、4月の統一地方選挙で、できるだけ多くの住民投票賛成の議員の当選を目指す。そのために、臨時議会での議員の言動をしっかり覚えておきたい。選挙後に市長のリコールもあり得る。

 関空、伊丹がある以上、私は神戸に空港はいらないと思っている。公共土木事業政策が行き詰まり、地球規模で環境問題が問われている今、9年前の決議に頼り、空港建設に固執するのはなぜなのか?良く考える必要がある。人工的自然破壊が、あの大震災の原因の一つだといわれているのに、このうえ山と海、二重の環境破壊につながる空港事業を推進させてはならない。次世代のためにも急がなくてはならないのは、我々が無自覚に傷つけてしまった環境の修復ではないのか。

 (雅)


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