「上筒井から」Vol.5(Nov. 1999)

☆区役所の窓口から☆ No.3


<介護保険の憂鬱>

 役所に払い込むもので、これほど負担感の重いものはないと思われるのが国民健康保険料である。今年も6月に新年度の支払通知書が国保加入者に送付されたが、それからしばらくは『こんな高くては払えない』『収入が変わらないにになぜこんなに値上がりするするのか』と、どの区役所も国保係は長蛇の列となった。 Aさんは63歳。年金生活で一人暮らし。年間220万円の厚生年金だけで暮らしている。このAさんには保険料年25万6千円の通知が行った。信じられない、何かの間違いではないのかというAさん。今年の神戸市の国保料は市県民税額×4.7+25310円×加入人数+30200円と計算される。Aさんの市県民税額は42800円なので、この計算式をあてはめるとこのような金額になるということである。間違いではないのである。

 Bさんは個人商店に勤めている。30歳代で妻と子供1人。昨年の給与支払い金額は約420万円。Aさんにはなんと年52万円の通知が送られた。これは神戸市の国保料の最高限度額である。調べてみるとAさんには市県民税が9万円弱かかっている。そうすると、さっきの計算式に当てはめると52万円となるのである。月52000円の保険料はとても払える金額ではないという訴えに職員も応える言葉はない。国保料は高すぎると職員も考えている。計算方法を説明して納得してもらえるなど誰も考えていない。減額の方法もいろいろあるので、あの手この手と考えてみるがAさん、Bさんも含め何ともならない場合も多い。

 ところで、この国保料であるが、計算方法(保険料率)は毎年変わるのであるが、それは市会で決めているわけではない。国保全体の収支予測から逆算して市が決めているのである。(もちろんそういう方式にするということは市会で決めた条例に定めてあるのだが)だから、昨年のように特別減税の額が大きい場合、国保料率はとんでもなく大きなものになるのである。昨年の国保料は市県民税額×7.08+24980円×加入人数+30280円というものであった。市県民税の7倍以上というのであるから、年7万円の市県民税であれば国保料は最高限度額52万円ということになるのである。要するに特別減税分は保険料で取り返されてしまう上に、とても支払いができない保険料が課される場合が続出するのである。

 来年4月からは、介護保険が始まる。あの国民健康保険料に加えて介護保険料となると来年はどんなことになるのか、役所の窓口は苦情が殺到するだろうな―と職員同士では話していたのだが、何と66歳以上の人からは半年間徴収をしないことに決定した。これで当面は混乱回避かと思ったら決してそうではない。先のAさん、Bさんはその対象外だからだ。果して介護保険によって、「介護を社会全体で支える」(介護の社会化)という目的が本当に実現するのか、不安と不信感を持っていたら、慰労金支給という動きでこれも怪しくなってきた。何年もかけて議論して決まったことがこんなに簡単に覆されるのかと驚いてしまうのだが、少なくとも今はっきりしているのは、来年4月から、40歳以上の人は介護保険料を払う必要があり、65歳以上の年金生活者は10月から天引きで引かれてしまうということである。これまで以上の負担増で、来年度の区役所窓口の混乱はもう避けられないのだろうか。こんな保険料は払えないという市民に対し、私たちは一体どう答えたらいいのか。だれか教えて欲しい。

(I.K)


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